基礎から学ぶ制御工学-17
基礎から学ぶ制御工学
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3.5 流体の微分方程式例題
3.5.1 水位系の計算の基礎
(1)ベルヌーイの定理
ベルヌーイの定理は水理系の基本的な法則で,流体の高さ,速度,圧力のエネルギーの和は一定であるという,エネルギー保存則であるといえます。
$\dfrac{p}{\rho g}+\dfrac{v^2}{2 g}+h=一定$・・・(3.5.1)
ここで,$p$:圧力,$\rho$ :密度,$g$:重力加速度,$v$:速度,$h$:高さ
この式の単位は$m$で表し,次のように呼びます。
$\dfrac{p}{\rho g}$:圧力水頭,$\dfrac{v^2}{2 g}$:速度水頭,$h$:位置水頭
(2)トリチェリーの定理
ベルヌーイの法則からダムやタンクから流出する水量を求めます。
図のように,タンクに入っている水の高さ$h[m]$として,タンク下部から水が出ている場合について考えます。このとき,出口の高さは考えなません。
図 3.5.1 トリチェリーの定理
・タンクの水面では
圧力=0,速度=0なので,位置水頭だけとなります。
・また,タンク下部の水の出口では
圧力=0,位置(高さ)=0となるので,速度水頭だけとなります。
よって, ベルヌーイの定理から,
$h=\dfrac{v^2}{2 g}$・・・(3.5.2)
よって,速度は
$v=\sqrt{2 gh}$・・・(3.5.3)
この式は,トリチェリーの定理と呼びます。
タンク下部の出口の断面積を$S[m^2]$とすると,流出する水量$Q[m^3]$は次式で求めることができる。
$Q=vS=S \sqrt{2gh}$・・・(3.5.4)
(3)トリチェリーの定理の近似
水位系のモデル化の際に,平方根が微分方程式中にあると計算が難しいので,トリチェリーの定理の近似を行います。高さ$h$がある程度大きい場合は,流速$v$と高さ$h$の関係は直線で近似でき,次式のようにおくことができます。
$Q=Bh$ ・・・(3.5.5)
ここで,$B$:比例定数